医療機器、特に循環器病分野の医療機器は急速に進歩しています。これにより以前は胸を開いての開心術でしか、あるいはそれ以前には薬物療法でだましだまし何とか自覚症状を軽減させることでした治療できなかった多くの疾患が、今や胸を開かず経皮的 (= 皮膚を切り開くことなく)にカテーテルを用いて治療することが可能となってきました。この急速な医療機器の進歩をもたらしているのが、治験なのです。当科では、冠動脈内薬剤溶出性ステント、冠動脈内生体吸収性薬剤溶出性スキャフォールド、薬剤溶出性冠動脈内バルーン、薬剤溶出性末梢動脈ステント、薬剤溶出性末梢動脈バルーン、冠動脈内・末梢動脈内回転式アテレクトミー、経カテーテル大動脈弁植え込み術、経カテーテル僧帽弁修復術 (MitraClip)、経カテーテル左心耳閉鎖術 (Watchman)など多数の最先端治験を実施していきました。2020年にも最新の薬剤溶出性ステント、これは生体吸収性ではありませんが、植え込み後にその形状が血管走行に併せて適合するものがあります。また、難治性高血圧症に対する、腎動脈デナベーションも行っております。「常に最新かつ最良の治療法を患者さんに届ける」使命の下で、治験センターの一同と共に、頑張っています。
当科は循環器領域の治験、特に医療機器関連の治験に何と 2003年より17年間に渡り齋藤 滋の強いリーダーシップの下で積極的に取り組んできました。医薬品の治験はきちんとした診療を行っている医療機関であれば行うことが可能です。しかしながら、医療機器関連の治験は、どの施設でも行い得るものではありません。当該医療機器の性能、有効性、安全性評価のためには、前提としてその医療機器を適切に使用することができねばなりません。このためには、当然のことながら医療機器に対する治験を行った経験の無い施設よりも優れた医療技術と経験が必要なのです。
なぜ私達は医療機器治験を積極的に行うのでしょうか? 私自身その理由を挙げましょう (1)何よりも最新の改良された優れた医療機器を患者さんに提供できる可能性があるから (2)場合によっては、治験を行うことにより、最新の医療技術を患者さんに提供できる可能性があるから (3)治験を実施している時には、その医療内容が監査されることにより、標準的な医療実施環境を保つことができる (4)治験実施の過程で、さまざまな国内外の著名な研究者・医師と交流を図ることができ、これにより当科の医療レベルを向上することができる などなどでしょうか。
- これの良い例が、完全生体吸収性薬剤溶出性ステント (Bioregredable Vascular Scaffolding: BVS)治験および、国際共同臨床試験への参加、TAVI (CoreValve, Lotus Valve, Portico)による重症大動脈弁狭窄症患者さんの治療、そして手術困難な重症僧帽弁閉鎖不全に対するカテーテル治療(MitraClip)や、非弁膜症性心房細動に伴う 塞栓症予防のための Watchman device実施を挙げることができます。また、2020年には新たなDESとして齋藤 滋が主任研究者を勤めて治験が行われた Comboステントが認可されました。また、2020年にはさらに先進的な心疾患治療ディバイスに関する治験にも参加する予定です。