ペースメーカー植え込み

現在では年間 200例を超える患者さんに対して、ペースメーカー植え込み術、ICD/CRT/CRT-D植え込み術、さらには長い電極を使用しない、Leadless (リードレス)ペースメーカー植え込みもを行っております。以前に体内式ペースメーカー植え込み行われ、その後何らかの誘因で植え込み電極が感染した場合に、電極を抜去して新しい電極を植えねばなりません。しかし、植え込みが長年経過していると、電極は心筋に強く接合しており、その抜去にはレーザーで癒着組織を剥離する必要があります。これを行うのが、エキシマレーザーを用いた植え込み電極レーザー抜去術でありますが、当院では神奈川県下でも数施設しか無いレーザー抜去術施行の認定を受けており、他の施設からも抜去依頼を多数受けております。

当院での不整脈デバイスの特徴は、心臓カテーテル治療に熟知した医師による迅速な手技、指導医を有するリード抜去術、の2点が挙げられます。 2019年は全体で292件に対して行われ、新規移植症例は185件で、ペースメーカーが138件(内リードレスベースメーカー29件)、植込み型除細動器 (Implantable Cardioverter Defibrillator: ICD)が13件、心臓再同期療法デバイス (Cardiac Resynchronization Therapy: CRT)が21件、リード抜去術が30件、ルーブレコーダー植え込みが13件で行われました。これらの実績は神奈川県でも随一の件数であり、全国的にも多い症例数です。

心臓は、刺激伝導系と云った回路を電気が流れることで、働いております。この回路が加齢などの原因で断線してしまい、脈が遅くなった状態が徐脈と云います。徐脈により、失神などの症状、心不全を来すことがあるため、外部から電気的な補充を行い、脈を正常まで戻す機器がペースメーカーです。症例に応じて異なりますが、静脈を通してリード(電線)を2本入れ、本体と接続したものを体内に植え込みます。また、2年前より心臓に直接植え込むタイプのペースメーカー(リードレスペースメーカー)が導入され、当院でも50例の植え込みを行っています。以前は施行できなかったMRIの撮影も可能な機種もあり、自宅に居ながら機器のチェックを自動で行ってくれる、遠隔モニタリングも積極的に導入しております。
植込み型除細動器 (Implantable Cardioverter Defibrillator: ICD)とは、重症の頻脈性不整脈に対し、除細動(電気ショック)を与えることで正常の脈に戻し、突然死を予防する機器です。ペースメーカーに、街中にある自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator: AED)の機能が備わったと思っていただければ結構です。重症心不全や脈が速くなる頻脈性不整脈の患者さんは、不整脈による突然死を来すことが多く、薬物治療単独に比して有効性が示されています。
心臓再同期療法デバイス (Cardiac Resynchronization Therapy: CRT) とは、刺激伝導系の一部が断線することにより、心臓の電気的な障害を是正する機器です。電気的な障害が短期間続くことでは心臓の機能までは障害されませんが、長期的に続くと重症の心不全まで至ってしまいます。そのような患者さんに、通常よりも1本多く電線を入れることで、電気的な障害を改善し、ひいては心臓の機能まで改善させることが可能です。残念ながらどのような症例にも効果がある訳ではないですが、当院ではガイドラインを遵守し、70%の症例で改善を認めております。尚、CRTはペースメーカー機能のみのCRT-Pと除細動機能を併せもったCRT-Dの2種類があり、症例および患者さんの希望に合わせて、手術を行っております。
これらの不整脈デバイスの植え込み術は、1958年に心臓血管外科医による、徐脈性不整脈に対するペースメーカー植え込み術より始まりました。当初は弁当箱くらいの大きさでしたが、以後小型化が進んで3~4cm程度の大きさになり、現在は循環器内科医師が手術を行っています。
日本では不整脈の治療医が植え込み術を行うことが多いですが、当院では不整脈専門医より充分な指導を受けたカテーテル治療の医師が植え込み術を担当しています。カテーテル治療の医師は血管やカテーテルの扱いに熟知しているため、迅速かつ確実な手技が可能となります。特にCRTの移植は、血管の特性の理解が重要となるため、カテーテル治療でのテクニックを駆使し、全例に植え込みを成功させております。
症例に応じて手術時間は前後しますが、ペースメーカーおよびICDは1時間で、CRTは1.5時間で手術は終了します。又、当院では患者さんへの負担を考慮し、静脈麻酔による全身麻酔下で手術を行っております。
2016年から当院にてエキシマレーザーによるリード抜去も始めました。不整脈デバイスの遅発性の合併症として、感染症やリード機能不全が挙げられますが、そのような場合、入れ替えが必要となります。しかし、植え込みから時間経過を経た不整脈デバイスは、体内に堅固に癒着します。特に電線であるリードは血管内に癒着し、牽引だけでは抜けないことが殆どです。そこで、レーザーシースと云う癒着を剥離しながら血管内を進めるデバイスを用い、抜去を行います。また、2019年よりEvolutionと云う最新の抜去デバイスの導入も行いました。 当院では国内に9名のみ登録された指導医の内、1名が在籍しております。合併症のリスクもあり、全国的にも症例数が少ないため、技術的にも非常に慎重を要する手技ですが、全例でリード抜去に成功しております。特にデバイスによる感染症は、迅速に行わなければ致死的になることもあるため、迅速かつ積極的に取り組んでおり、紹介も随時受け付けております。

当科では、村上正人部長を中心とした不整脈チーム(水野真吾部長、真下優香医師、山田隆史医師、林高大医師)が、カテーテル・アブレーションを行っております。2019年一年間でカテーテル・アブレーション治療総数は 777件に達しました。この内心房細動に対するカテーテル・アブレーションは 575件でありました。これは全国でも有数の不整脈治療施設であることを意味します。